玉ねぎの蒸らし炒め——コンソメなしで洋食を美味しくする方法
- Kyoko

- 1 日前
- 読了時間: 5分

ある時期、生徒さんから「玉ねぎ先生」と呼ばれていました。
洋食レッスンのたびに、判で押したように同じ話をしていたからです。
「まず玉ねぎをこうして……」「玉ねぎがこの状態になるまで……」「大事なのは玉ねぎで……」。
自分では気づかなかったのですが、玉ねぎのことばかり話していたようです。
当時は少し恥ずかしかったのですが、今はむしろ誇りに思っています。
それだけ大切なことを、繰り返し伝えていたんだと。

なぜ、玉ねぎなのか
洋食は、塩だけで味を作る料理です。
和食には醤油・みりん・味噌など、旨みを持った調味料があります。
中華には豆板醤や甜麺醤など、醤(ジャン)の体系があります。
でも洋食は、基本的に塩しかない。
プロのシェフは鶏がらスープや骨のフォンで旨みを足しますが、家庭でそれをやろうとすると時間も手間もかかりすぎる。
だからコンソメという便利なものが生まれたし、多くの方がお世話になっています。
それは正解の一つです。
ただ、コンソメを使うとコンソメの味になる。
何を作っても同じ着地点になってしまう、という悩みも生まれる。
そこで私が使っているのが、玉ねぎの蒸らし炒めです。
蒸らし炒めとは何か
飴色玉ねぎという言葉を聞いたことがあると思います。
玉ねぎをじっくり炒めて、茶色くなるまで甘みと旨みを引き出したもの。
あれは素晴らしいのですが、色と香りがつくので使える料理が限られます。
クリームスープには入れにくいし、白い仕上がりにしたい料理では邪魔になることもある。
蒸らし炒めは、飴色玉ねぎの「白バージョン」です。
香ばしい色と香りをつけず、ただ旨みだけを引き出す。
何の料理にも使える、透明な旨みのベースを作ります。
やり方
材料と準備はシンプルです。
玉ねぎを薄切りにする
玉ねぎの重さを量り、その2%の塩とオイルを軽くまぶす
厚手の鍋に入れて、蓋をして極弱火にかける
そのままゆっくりじっくり加熱する
以上です。ここから先は、玉ねぎが自分でやってくれます。
何が起きているか
塩をまぶすと、浸透圧で玉ねぎの細胞から水分が出てきます。
その水分が鍋の中で蒸気になり、蓋をしているので逃げ場がない。
玉ねぎが自分の水分で、自分自身を蒸らすことになります。
水を足す必要はありません。
玉ねぎが持っているものだけで完結する。
時間をかけて加熱を続けると、玉ねぎはだんだん透明になっていきます。
シャキシャキした歯ごたえが消えて、角が取れて、箸でつつくと崩れるくらいやわらかくなる。その状態になったら完成です。
ひとつ注意点があります。
玉ねぎから出る水分だけが頼りなので、蒸発が早く焦げやすいのが難点です。
心配な場合は最初に大さじ1程度の水を加えておく。
途中で水分が少なくなってきたら都度大さじ1ずつ足しながら進めてください。
一度に大量に入れると時間がかかるので、少量ずつが鉄則です。
鍋の大きさと玉ねぎの量
地味に大事なポイントです。
カットした玉ねぎを鍋に入れたとき、鍋の高さの1/3以内に収まるように。
それが入れられる上限の目安。
残りの2/3の空間に蒸気が滞留することで玉ねぎが蒸らされるので、ここが狭すぎるとうまくいきません。
逆に鍋底が透けて見えるほどスカスカでも失敗します。
水分がすぐに蒸発して焦げやすくなるからです。
「鍋底に満遍なく玉ねぎが敷かれ、蒸気が滞留する余白が十分にある」
——この状態が作れる鍋を選んでください。
仕上がりの目安
完成した玉ねぎは、こんな見た目・状態になります。
全体が透明〜半透明になっている
形は残っているが、角が取れた感じ
甘い香りがしている
茶色い焦げはついていない
ここまで火が入ると、玉ねぎの「刺激」がほぼ消えて、旨みと甘みだけが残ります。
これが目標の状態です。
時間の目安は玉ねぎの量と鍋によりますが、中玉1個で30分ほど。
急いで火を上げると焦げてしまうので、弱火でゆっくりが基本です。
どんな料理に使うか
このベースがあると、旨みを「重ねる」ことができます。
野菜スープ——玉ねぎの旨みが出汁代わりになる
チキンのクリーム煮——鶏の旨みと玉ねぎの旨みが合わさる
トマト煮込み——トマトの酸味と玉ねぎの甘みのバランスが出る
グラタンやミートソース——ホワイトソースや肉の旨みを引き立てる縁の下の力持ちになる
「何を入れても同じコンソメ味」ではなく、「この料理にしかない味」が出るのは、ベースの旨みが素材由来だからです。
コンソメを完全にやめる必要はありません。ただ、このひと手間を加えるだけで、スープも煮込みも、同じレシピでも違う顔になります。

玉ねぎ先生、というあだ名について
「玉ねぎ先生」と呼ばれた頃のことを振り返ると、私はこの技術が当たり前すぎて、まさか珍しいとは思っていなかった。
でも生徒さんにとっては、毎回同じ話を聞かされる「例の玉ねぎの件」だったわけです(笑)。
教室の名前「ミルポア(mirepoix)」は、フランス料理の香味野菜の組み合わせ——玉ねぎ、にんじん、セロリのことです。
料理の土台になる素材たちの名前をそのまま屋号にしました。
玉ねぎ先生という呼び方は、そういう意味では一番の核心をついていたのかもしれません。
毎月新しいメニューをデモンストレーション形式でご紹介しています。今月のレッスンの詳細・ご予約はこちらから。
▶ レッスンの詳細・ご予約はこちら https://tol-app.jp/s/mirepoix
玉ねぎの蒸らし炒めを使ったレシピを含む、733件のレシピと77本のレッスン動画はミルラボでご覧いただけます。月額980円から。
玉ねぎの蒸らし炒めについては、NOTEでさらに深掘りしています。なぜコンソメをやめたのか、旨みをどう重ねていくのか——洋食の味の作り方を一つずつ解説しています。
▶ NOTEを見てみる https://note.com/kyoko_mirepoix



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